【魔法のレシピ #008】『ダイアゴナル・パーム&シフト』 – パスと並ぶ、技法マニア垂涎の上級技法「DPS」を学ぶ。極限まで無駄な動きを削ぎ落とす方法♠

Text by magician soboga

目次

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はいどうもsobogaです。
みんな大好きDPSの回がやってまいりました。難しい技法を自慢するならクラシック・パスかダイアゴナル・パーム・シフトと相場が決まっているようですが、今回はダイアゴナル・パームとダイアゴナル・パーム・シフトの解説です。

ん?となった方いますかね。タイトルも『ダイアゴナル・パーム&シフト』っていう表記だし、ダイアゴナル・パームとダイアゴナル・パーム・シフトはなんか違うの?と。

違いますね。あー、ちょっと技法名長いのでここから略称でいきますね。ダイアゴナル・パームは「DP」、ダイアゴナル・パーム・シフトは「DPS」って呼びます

DPとDPSは違いますね。
それぞれ技法の目的が違います。スティールしたカードの最終着地点が違います。
DPの目的はパームすることで、最終着地点は左手ですね。そして、DPSの目的はシフトで、最終着地点はデックのボトムになります。ここで言う「シフト」は”位置を変える”くらいの意味です。

「D」の部分、ダイアゴナルでのカード・スティール方法が同じなので一緒くたにされがちですが、目的で考えれば実は別物の技法と言えるかもしれません。ただ、今回の動画で両方解説しますけどね。

「Trick Library」では、「技法」の「スティール」、「パーム」、「パス/シフト」、及び「コントロール」の4つのカテゴリに分類しています。難易度は[上級]です。

Trick Libraryを見る >>

DP及びDPSは、カテゴリ分類からもわかるとおり、スティール、パーム、シフト、コントロールの性質を併せ持った、複合技法だということですね。

さっそく解説に入りますが、「D」と「P」と「S」、つまり、「D ダイアゴナルでのカード・スティール」の部分、「P パーム」の部分、「S シフト」の部分の3つに分けて解説していきます。

それでは参りましょう。

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ダイアゴナルでのカード・スティール

まずは、「D」の部分、カードの抜き取り方です。DPとDPSで共通する箇所ですね。
ちなみに、あとでちゃんとやりますが、同じ「P」でもDPとDPSでは「P」のやり方が変わってくるので、共通するのはこのダイアゴナルでのカード・スティールだけです。

ターゲットカードをアウト・ジョグする

技法のスタートポイントがこれです。
ターゲットカードのアウト側右コーナーを、親指が上になる形でつまみ持って、デックのアウト側左コーナーをリフルするか持ち上げて開くかした隙間に差し込みます。

次に、中指あたりを使って、観客からはっきり見える形でカードを押し込み、残り7〜8mm程度のところで止めてアウト・ジョグの状態にします。

左手の予備動作

カードを押し込む前の左手ですが、かなり特殊な形を取るので説明しておきます。
このような形です。小指がキモいですね。実際ちょっと窮屈な、小指にストレスの掛かる形状です。

このあと、抜き取ったカードを小指を使って回転させるんですが、この時点でその準備をしておきます。実際の技法の動きは「カードを抜く → 回転させる」の2つの動作を、実質1ステップで間髪入れずに行う必要があるので、この予備動作をしておくことですべての動きをスムーズにすることができます。

歴史的なことを言うと、僕の知る限りでは、昔のDPSって「カードを抜く → 回転させる」の箇所に、細かく見ると3ステップ要したんです。「カードを抜く → 手を戻す → 回転させる」の3ステップですね。

パーム位置を考えると、回転させる指は小指以外には考えられないため、昔は手の位置を戻すことで小指での回転を実現していたんですね。

そして、今回解説する方法は、ちょっと小指に無理をかけて、抜いて回転させるを一撃で決める方法で、そのための予備動作がこれです。

ここで、一応、親指にも言及しておきましょう。
親指がアウト側左コーナーにあった場合、そこにカードが突き出てくるので、親指が邪魔になるように思えるかもしれませんがそんなことはありません。強く握り込んでいない限り、親指の腹の肉を押し上げてカードは出てこれるので、逆にいえば突き出てくるカードをしっかり隠せる位置に親指があるのが正解です。

脱力した状態でアウト側左コーナーに当てておいてください。

ダイアゴナルを作る

この技法のキモの部分ですね。アウト・ジョグにしたカードをダイアゴナルにします。
「アウト・ジョグにしたカードをダイアゴナルにします」って一般の人が聞いたらわけわかんないですね。「アウト・ジョグ」もわかんないのに「ダイアゴナルにします」って言われてもねぇ。キモの部分ていうよりはだただたキモいですね。

で、この技法でいう「ダイアゴナル」は、カードが「斜めに」差し込まれた状態のことをさします。斜めに差し込むことで、アウト側左コーナーとイン側右コーナーに突き出た部分を作り出しているんですが、この「突起」を使ってカードを抜き出すわけですね。

作り方ですが、このようにまっすぐ押し込んだら当然まっすぐ入っていきますが、

こうやって左コーナー寄りを押すことでカードを斜めにして押し込むことができます。

実際はこうですね。中指、薬指、小指の3本で押し込んでるように見せて、実際には中指だけで押し込んでいます。

スティールする

ダイアゴナルにしたターゲットカードをイン側エンド方向にスティールします。
専門用語をこれだけ並べるとやっぱりキモいですね。この解説キモいが多いですね。

真面目にやります。

ダイアゴナルによってできた2箇所の突起に、親指と中指を引っ掛けて、イン側にまっすぐ引き出します。

注意するのは2点。
右手の親指の位置と、左右どちらの手を動かすかです。

1点目は右手の親指ですが、ダイアゴナルを作った際に押し込んだときのままの位置だと、イン側にカードを引き出す邪魔になります。

なので、このように、斜めに伸びた親指を第一関節で曲げて、カードの出口を開けて邪魔にならない形を取ります。これでカードをスムーズに引き出すことができます。

そして2点目は、左右どちらの手を動かすか、つまり、左手を引くのか右手を押すのかということですが、右手を押します。

左手の位置は固定していたほうが技法が安定するということと、この部分は、観客目線ではデックのサイドを揃えているだけに見えなければならないため、右手を押したほうがそれっぽい動きになるということです。

観客目線の動き

ここで観客目線のことを言及しておきます。

DPは「デックのサイドを1回揃えてエンド・グリップで持った」という動きでの左手パームです。

そして、DPSは「デックのサイドを1、2と2回揃えて、エンドも揃えてディーリング・ポジションで持った」という動きの中で、カードをボトムにシフトするものです。

DP及びDPSは(これらに限らない話ですが)、この観客目線が非常に重要で、これを意識するだけでも動きがだいぶ変わってくる技法です。

スティールしたカードを回転させる

カードを抜き出したところに話を戻します。
ここからカードを回転させて左手に持ちますが、ここまでがDPとDPSの共通する動作となります。

カードを回転させて完全にデックから抜き出したら、このように左手で持つことになります。

細かく動きを見ていきましょう。

左右の親指同士が触れ合う位置までカードを引き出すと、カード自体は反時計回りに回転しながら、右側に大きくせり出しすかたちで出てきます。右手をどかして見ると右の写真のような形ですね。相変わらず中指、薬指、小指のフォーメーションがキモさを保っています。

ここから今度は、左手小指を使って右手親指を支点に時計回りに回転させて、デックから抜き出します。やっと小指のストレスが開放されます。

視点を変えて見たほうがわかりやすいですね。
窮屈な形でスタンバイしていた小指をカードのサイドに当てて、時計回りに回転させます。このとき支点となっているのが親指です。

どこまで回転させるか?
イン側左コーナーが、親指付け根のスイートスポットに当たったところで回転が止まります。ていうか、スイートスポット目掛けて回転させて、そこに当たったら回転を止めます。

ああそうか、まだボトム・パームの解説してなかったですね。順番間違えたな。
パームの解説はそのうち作りますが、パームするのに最も適した親指付け根の箇所をスイートスポットと表現しています。スイートスポットは個々人場所が違うので、それを把握しておくことが重要で、そのスイートスポットを捉えるように回転させます。

さて、そこまで回転させると、カードは左手と同じ角度となっていて、先ほどのスイートスポットと中指と小指の3点でカードを保持している形だと思います。

ここまで来たら、左手全体を時計回りに、右手全体を反時計回りに動かしてカードを完全に抜き出します。

最後の注意点は左手の親指と全体の角度です。どちらもフラッシュに関わることです。
フラッシュとは、見えてはいけないものが観客に見えてしまうことですね。

DPにしろDPSにしろ、この時点では左手の親指が決してデックから離れないようにしてください。抜き出したカードが観客から見えないようにスクリーンとなっているのがこの親指なので、こいつがデックから離れた瞬間にフラッシュしてしまいます。

そして、この技法において最も角度に弱い瞬間がこのときで、デック全体の上下の角度に要注意です。

角度を上げすぎても下げすぎてもフラッシュするので、観客の目線に合わせた最適な角度を鏡やカメラを使って研究してみてください。

こればっかりはスピードで解決できる問題ではないので、最適な角度を身体で覚えることと、観客の目を見て話しかけるなどのミスディレクションも必要となる瞬間です。

はい、ここまでがDP、DPSに共通する「ダイアゴナルでのカード・スティール」の解説でした。「D」の部分が終わったわけですね。

続いて、DPとDPS、固有の箇所を解説していきます。
まずはDPから。

ダイアゴナル・パーム

スティールしたカードをパームする

DPは、スティールしたカードをパームしたところで技法が完了します。

スティールした時点ではこの形でしたね。
ここから小指と親指付け根の2点でのパームに移行します。

右サイドにある小指をアウト側右コーナーに持っていくわけですが、僕は小指が短い人間なのでこのままでは届きません。(届く人居るんですかね?そういう人は直接持っていってもいい気がします。)

なので、人差し指と中指を使ってカードを握り込んで湾曲させて、小指を届かせます。届いたら、小指にもパームに最適なスイートスポットのような箇所があるかと思います。そこをしっかり当てましょう。

最後に、握り込んでいた指を伸ばせば左手パームの完成です。

これが、DP、ダイアゴナル・パームです。

ダイアゴナル・パーム・シフト

最後にDPSの解説です。

解説する前に言っておくと、普通のDPSのやり方とちょっと違います。
普通は技法名の通り、ダイアゴナルしてパームしてシフトするんだと思います。たぶん。

僕もしばらくそうしていたんですが、技法の目的を考えたらパームする必要なくね?とあるとき気付いてからは、パームをすっ飛ばして、スティールした形のまま、ボトムにシフトする方法を取るようになりました。今回は、そのやり方での解説です。ひと手間省けるのでよりスムーズに技法が流れるのでおすすめです。

スティールしたカードをボトムへ

これもスティールしたところから説明します。

親指はしっかりとイン側左コーナーに当たっています。観客からすると、親指で左サイドを上から下に揃えたところですね。
ここから今度は、左サイドを下から上にもう一度揃える動きで、スティールしたカードをデックのボトムに潜り込ませます。

スティールの際にアウト側に押し出した右手を、今度はイン側に引き戻しますが、ボトムにスティールカードを潜り込ませるために、デックのイン側エンドを少しだけ持ち上げます。

そして、左手親指をデックの左サイドに当てたまま、右手をイン側に引き戻します。どこまで戻すかというと、デックのイン側左コーナーボトムが、親指付け根のスイートスポットに当たるところまでです。

そうしたら、スティールカードのアウト側エンドを保持していた指をどけて、小指を使ってスティールカードをデックのボトムにドッキングさせます。スティールカードは反時計回りに回転しながらボトムに密着することになります。

最後に、右手で両エンドを揃えたふりをして(実際に揃えるけど)、デックをディーリング・ポジションに持ったらDPS、つまりダイアゴナル・パーム・シフトが完了します。

そういえば、これまで深く考えませんでしたが、よく考えると名前違いますね。パームしないから「ダイアゴナル・スティール・シフト」ですかね。なので「DSS」だ。どうでもいいか。

以上、ダイアゴナル・パームとダイアゴナル・パーム・シフトの解説でした。
DPとDPSの違いを対比させて説明したほうがわかりやすい気がしたのでまとめて解説しましたが、似て非なる、2つの別々な技法だということが伝わったのではないでしょうか。

パームしたいのか、シフトしたいのか、目的が違うのでそりゃそうなんですが、それぞれの目的に合わせて使い分けられるようにしておくといいですね。

実践を見据えた練習

ここで、「この技法ができるようになった」で終わらせないために、実践を見据えた練習方法を2つ紹介しておきます。

カードの差し込み位置を変えて練習

1つ目はこれです。カードの差し込み位置、トップのほうだったり、真ん中あたり、ボトム付近と、あらゆる差し込み位置に対応できるようにしておくということです。

今回の解説のように演者自らカードを差し込むなら、最もやりやすい位置で技法を行えばいいんですが、例えば、観客が自由にカードを戻した位置でやるとなると、差し込まれるところは真ん中とは限りません。ほぼボトムみたいな場所に差し込まれる可能性もなくはないので、その場合でも問題なくスティールできれば困ることはなくなります。

やり方としては、差し込み位置に合わせて、左手親指が左サイドに当たる高さを調整します。ダイアゴナルによって飛び出す「突起」と親指の位置関係を、どこに差し込んだ場合でも同じに保てば、スムーズにカードを引き出すことができます。

また、トップから2枚目みたいな極端なパターンで練習するといいですよ。DPSに限った話じゃないですけど。通常のパターンよりもやりにくい、極端な練習を繰り返してスムーズにできるようになってくると、通常のパターンがめちゃくちゃ簡単に感じられるようになりますよ。

複数枚でDPS

マルチプル・ダイアゴナル・パーム・シフトみたいな長っがい技法名のやつですね。

マルチプル・ダイアゴナル・パームの連続写真(3枚のカード)

2枚以上の枚数でDPなりDPSする技法ですが、現場でこれをやるかどうかはさておき(やれれば便利ですけどね。3人の観客カードを一度にポケットにスティールできたりするので。まあそれはさておき)、これもさっきの極端なパターンで練習するといいよって話に繋がります。

2枚とか3枚とかでなんとかできるようになると、マジで1枚のときがびっくりするくらい簡単になります。複数枚だと、指の位置や動きがかなり正確でないと上手くいかないからだと思いますけどね。さっきも言ったとおり、これを人前でやるかどうかは置いておいても、技法のクオリティを上げるためという意味でおすすめの練習方法です。

まとめ

はい、ダイアゴナル・パームとダイアゴナル・パーム・シフトの話はこんな感じです。
動きがかなり特殊な技法なので、マスターするまでには少し時間がかかるかもしれません。

以前、「ピンキー・カウント」の解説の中で、難しい技法をマスターするときの効率的な練習方法を紹介しました。短期集中型のトレーニングは効率悪いですよーってやつですね。それなんかを参考にして練習するのもいいかもしれません。

座っている観客目線に合わせている
それを別の角度から見ると・・・

また、クラシック・パスとか今回のDPSのような大胆でダイレクトな技法は、それ一発で目的を達成できるのが強みな反面、だいたいが角度に制限があるという弱みも持っています。真横にも観客がいる場合なんかは丸見えになってしまって絶対に使えないわけで、どの角度までが有効で、どこからフラッシュするのかしっかり把握したり、この位置に観客がいる場合は自分の身体の向きをこっちに変えなければならない、であれば、身体の向きを変える理由付けをしなければならないなど、いろいろ考えることが出てきます。

難しいだけに研究しがいのある技法ですので、腰を据えて、長い時間をかけてモノにしてください。

では、また。

sobogaの蛇足

極端繋がりでいえば、1mmくらいのアウトジョグからのダイアゴナルっていうのもありますね。これをやったところで観客に対しての説得力は1ミリも上がらないので、極端パターンの練習以上の意味はありませんけど。

ただ、想定以上に押し込んでしまうような不慮の事故にも対応できるので、練習しておくこと自体は無意味ではありませんよ。できないよりできたほうがいいに決まっています。

まあこれ、ぶっちゃけちゃうと、1mmってすごそうに見えるんですけど、見た目ほど難しくありません。DPS自体をマスターしていれば、というか、ダイアゴナル状態をきちんと作れるようになっていれば、1cmだろうが1mmだろうがたいして違いはありません。

ああ、だから、逆説的なことが言えますね。1mmのダイアゴナルができるってことは、ダイアゴナル状態をきちんと作れているって言えそうですね。

まあ、まあ、まあ、差し込み位置を変えて練習とか、複数枚での練習に比べると、あんまり意味はないので蛇足な話ですね。

あらためて、では、また。

参考文献

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