『ディーリング』マジシャンとしてのスタイルを決定づける大きな要素である「カードの配り方」♠【魔法のレシピ #24】

Text by magician soboga

目次

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はいどうもsobogaです。
今回、「マジシャンとしてのスタイルを決定づける大きな要素」なんて大仰なタイトルを付けましたが、個人的にはぜんぜん間違っていないと思っているんですけどね。

事実、カードの配り方だけでプロか素人かは一瞬でバレますよね。まあ、それもあるし、カードの配り方、つまりディーリングを見ればどんなスタイルのマジシャンなのか、ある程度わかるものです。

上の写真で伝わりますかね?配り方ひとつでガラッと印象が変わりますよね?
今回はそんなカードの配り方「ディーリング」について解説します。

Trick Libraryでは、「カードの基礎」の「ディーリング」のカテゴリに分類しています。難易度は[初級〜中級]です。

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中級が含まれているのは、デモンストレーションで最後にやった、カードを飛ばして配るやり方「ピッチング」っていうんですけど、カジノのディーラーがポーカーなんかのときにやる配り方ですが、それも解説するためです。これだけはちょっと、今日解説を見てすぐにできるようになるかどうかは微妙かなと思ったんで中級としました。

ピッチング以外は、最もオーソドックスな配り方の解説です。最初に学ぶ「型」だと思っていただければいいんじゃないでしょうか。

それでは解説です。

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共通事項

ここから4種類の配り方を解説しますが、まず最初にそれぞれに共通する事項を解説してしまいましょう。ほとんどが左手の動きに関することです。

はっきり言っておくと、ディーリングに関してはこの共通する動き、左手の動きですが、それがコアになると言っても過言ではないかと思います。裏向きに配るか表向きに配るかなど右手の動きはコアに付随するおまけみたいなものです。

ディーリングポジション

他の解説記事でも何度も言及していることだし、「ディーリングポジション」の解説記事も出しているんですが、この記事がはじめましての方もいるだろうし、“ディーリング”の解説なのであらためて説明しておきますが、正しいディーリングポジションの角度はこうです。水平のままディーリングするよりも圧倒的にやりやすくなります。ディーリングポジションの詳細については下記URLから参照してください。

左手の動き

では、ディーリングポジションの左手の動きです。

ナチュラルビベル

配り始める直前に、一瞬、左手を脱力させてナチュラルビベルを作ります。こんな感じのゆるい自然なビベルですね。

カードを何枚も配っていくと残りのデックの厚みが徐々に失われていきますが、初めにゆるいビベルを作っておくことで、最後までディーリングのしやすさが維持されます。

プッシュオフは斜めに押し出す

1枚ずつディーリングするためには、親指で1枚ずつプッシュオフしていきますが、右方向に真っ直ぐ押し出すのではなく、右下方向に斜めに押し出します。この動きはディーリングのときだけの動きです。

こうする理由は、通常のプッシュオフでは連続した親指の伸縮動作が非効率的過ぎるからです。斜めに押し出す場合の親指は、伸縮の”縮”が必要ありません。伸ばしっぱなしで、かつ少ない移動距離でスピーディに押し出し続けることができるのでおすすめです。

左手だけが動く

右手と左手の関係においては3通りのアクションが考えられます。

  1. 左手を固定して右手がカードを取りに行く
  2. 右手を固定して左手がカードを取らせに行く
  3. 左手は取らせに行くし右手は取りに行く(両手が動く)

あくまでもsobogaはこうしているということですが、2番の「右手は固定して左手がカードを取らせに行く」です。もっと簡単に言うと左手だけが動くってことですね。正直どれでもいいと思いますが、個人的には、右手は「カードをつかんでテーブルに置く」だけに集中したほうが全体的に安定するのでそうしています。「カット」の回でも同じようなことを解説しましたが、そのときと同じ思想でやっています。

右手と左手の位置関係

「左手だけが動く」に関わることですが、複数箇所に配る場合の位置関係についてです。その場合においても右手と左手の関係は変わりません。

こんな感じに右手だけが頑張る、みたいな配り方はせずに・・・

右手は配る場所に固定、左手が右手に渡しに行く、なので、体全体を配る場所の方向に動かして、右手と左手の位置関係は維持したまま配っていきます。

 

ここまでがディーリングの共通事項です。重要な部分の解説は終わったので、あとは右手の動きの違いだけです。サクサクっと解説していきます。

裏向きに配る

ここからは右手の動きに注目していきます。
まずは、裏向きに配るやり方です。

指先でつまむような持ち方ではなく、親指の腹と、軽く曲げた中指の第一関節の側部でカード右サイドの真ん中あたりを軽くはさむように持ちます。人差し指は観客側右コーナーに当てて安定感を増強しています。見た目的にはこんな感じです。
右手全体をリラックスさせたまま、どこも力むことなくカードを持ちます。

カードの置き方は、カードを下から支えている中指をさらに軽く曲げることで、カードが中指から外れ、結果、親指で下方向に押し付けられる形で置かれます。

カードをつかんでからテーブル上に置くまで、右手で稼働しているのはほぼ中指だけですね。

表向きに配る(1)

次に、表向きの配り方その1です。右手の動きだけ変わります。

右手は手の甲が上を向く形を取ります。その形で、親指・人差し指・中指で、押し出されたカードの右サイド真ん中あたりをつまみます。そこからカードを観客側に表返しながら人差し指を観客側右コーナーに当てます。

そうすると、裏向きに配るやり方とまったく同じ形になるので、裏向きに配るやり方と同じようにカードを置きます。

表向きに配る(2)

続いて、表向きの配り方その2です。

親指が上になる形で、親指と中指の腹で観客側右コーナーをつまみます。人差し指は観客側エンドに添えています。そこからカードを手前に表返します。

表に返すと親指が下になる形になるので、カードを置くときは親指をカードから外すようにすればスムーズに置くことができます。

ピッチング

最後に、「ピッチング」と呼ばれるカジノディーラーがやる、カードを投げ飛ばして配るやり方の解説です。
ポーカーデモンストレーションなどのギャンブルネタを演じるときに使いたいディーリングです。ポーカーテーブルのようにそこそこ広いテーブルでなければ使い所はないかもしれませんけどね。

さて、具体的なやり方です。
カードの持ち方は、親指と人差し指で右サイドのちょうど真ん中あたりをつまんで、曲げた中指の第一関節を右サイドに当てます。カードをどかしてみると右の写真のような指の形です。

よく見るとカードがわずかに湾曲しているのがわかると思います。力の具合を言葉で説明するのは難しいんですが、この時点ですでに中指は外側に指を伸ばそうとしていて、それを親指と人差指で押さえている状態です。その結果、カードが湾曲することになっています。

その状態から、押さえの力を開放しつつ一気に手を開けば、カードは中指に押し出されて回転しながら真っ直ぐ飛んで行きます。一切、投げるという意識はありません。ただ勢いよく手を開いているだけです。

最初は狙ったところに飛ばなかったり、勢いが足りなかったり、回転が足りなかったりするかもしれませんが、練習を重ねることでコントロールできるようになると思います。

狙ったところに飛ばすコツは、共通事項で説明した「右手と左手の位置関係」を強く意識してみてください。基本的には、ディーラー(演者)の正面に真っ直ぐ飛んで行きます。ということは、複数箇所に配るなら、小手先で方向を変えるのではなく、右手と左手の位置関係を保ったまま、体全体を目的に向けて飛ばすようすると上手くいくと思います。

まとめ

はい、お疲れさまでした。
最後のピッチングは、マジックにおいてはちょっと特殊でしたが、それ以外はごくごく基本的なディーリングの解説でした。

まとめておくと、裏向きの配り方が1種類、表向きの配り方を2種類、それに加えてピッチングの4種類でした。

そして、より重要なのは左手の動きだっていうことも話しました。「左手が技法の土台で、右手がスタイルを表すもの」と言い換えることもできますね。

なんにせよ「カードの扱い」ということにおいては切っても切れないのがディーリングという技法ですので、まずはしっかりと基礎を習得して、そこから自分なりに発展させていただければと思います。

では、また。

sobogaの蛇足

カードの配り方というか“並べ方”の話ですが、例えば、何枚かのカードを表向きにこんな感じに並べる場面がありますよね?重ねてはいるんだけどすべてのカードを確認できる並べ方です。

そんな場面でこの並べ方やっちゃってる人いませんか?これダメな並べ方ですよね。観客からの見え方をまったく考えていない並べ方です。

正解はこっちですね。そうです、インデックスが観客から見て正常に見える並べ方ですね。さっきのダメな並べ方だと、観客から見るとインデックスが逆さまになっちゃいますよね。

リボンスプレッドでも、裏ならいいですけど、表を示したい場合は広げやすいほう(左の写真)でやるとインデックスは逆さまになります。なので、広げづらくなりますけど右の写真が正解です。

並べ方に話を戻しても、そうなんですよ。右利きの場合、左から右に向かって並べたほうが並べやすいんですけど、それは演者の都合であって、観客にとってはめちゃくちゃ不親切な行為になってしまうんですね。

このへんのことは、トリックがウケるかどうかとか、トリックの手順のことばかりを考えていると意外と気付かない部分だったりします。趣味の範囲なら問題ないですが、プロとしてお金をいただいてマジックをするなら、例えばパスが上手くできるかどうかみたいなことなんかよりも、もっともっと大事なことだったりしますよ、というsobogaの蛇足でした。

あらためて、では、また。

参考文献

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