【魔法のレシピ #007】『ティルト』 – 今やワンハンド・ゲットレディが当たり前。更にアイディア追加でコンビンシングな(説得力のある)ティルトを学ぶ♠

Text by magician soboga

目次

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はいどうもsobogaです。
みなさん「ティルト」使ってますか?
今回はティルトについて解説しますよ。

「Trick Library」では、「技法」の「コントロール」と「ブレイク」に分類しています。難易度は[中級]です。

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ティルトは初級じゃね?という声が聞こえてきそうですが、Trick Libraryでは右手を使ってトップカードを持ち上げるのを禁止しているため中級に設定しました。

ちなみに、Trick Libraryの難易度付けの基準は、完全なるマジック初学者の方が、学んですぐに動きだけでもとりあえずできるようになるものだけを初級としていて、ある程度の練習期間を要するものや、技法を行うためにはベースとなる別の技法をマスターしていなければならないものなどはすべて中級以上としています。

このティルトを行うには、前提として片手でブレイクを作れる必要があります。まだ片手じゃブレイク取れないよという方は、前回のNo.14でブレイクの解説をしましたので、そちらを先に学んでください。片手でブレイクを取るいくつかの方法を解説しています。

さて、ここからティルトの解説に入ります。

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ティルトとは?

まずはティルトの概要です。
トップカードの手前エンドを持ち上げて傾斜を作り、正面からはデックの真ん中あたりに1枚のカードを入れているように見せて、トップから2枚目にコントロールする技法です。

別名「デプス・イリュージョン」とも呼ばれ、名前としてはこっちのほうが厨二病臭くてカッコいいんですが、「ティルト」のほうが広く知れ渡っているので、Trick Libraryではティルトで統一します。

観客からは真ん中に入れたように見えるのに、実は2枚目にコントロールできるので、アンビシャス・カードでよく使われている印象です。

基本的なやり方

観客の選択したカードやサインカードなど、ターゲットとなるカードを右手に持ったところからスタートします。持ち方は、手前右コーナーを、親指が上になる形で、親指と人差し指でつまむ持ち方です。

ワンハンド・ゲットレディ

ワンハンド・ゲットレディとは片手でティルトの準備をすることで、近年では右手を使わずに片手で準備するのが当たり前となっている主流なやり方です。魔法のレシピでは、技法のためだけに右手がデックに近づくことを良しとしない哲学をベースとしているのでこれを採用しています。

まず、デックのトップカードの下にブレイクを作ります。
ここでは、初学者向けに通常のプッシュオフでブレイクを取っています。
このときのブレイクは小指の指先にカードが乗るように取ると、このあとの動きがやりやすくなります。

そこからティルトの形にもっていきます。
ブレイクが取れたら中指と薬指で上から下方向に軽く圧力をかけて、手前右コーナーが若干反り上がった状態を作ります。親指側の手前左コーナーは、親指の付け根がカードを押さえているため跳ね上がることができない状態です。

その状態から、親指の指先は観客側左コーナーに残しつつ、親指の付け根をカードから離すと、手前左コーナーが自動的に開いて、手前エンドが均等に持ち上がった、つまりティルトの状態ができあがります。そうしたら、正面から見たときには自然なディーリング・ポジションに見えるように、各指の位置を微調整してください。

ティルトの大きさ(幅)は7mmくらいがちょうど真ん中に入れたように見える幅ですかね。
デック一組が大体1.5cmほどなので、それの半分くらい持ち上げると錯覚が起きやすくなります。

そして、注意すべきは左手の角度です。ティルトは、要は巨大なブレイクなので、演者から見て右方向にいる観客からの視線がウィークポイントになります。右サイドの開きが観客からの視線に入らないよう、右サイド側に傾けて持つようにしましょう。

ディーリング・ポジションの角度については、『グリップ/ポジション(デックの持ち方)』の解説を参照してください。

ここまでがティルトにおけるワンハンド・ゲットレディです。

ターゲットカードを差し込む

次に、右手に持ったターゲットカードの差し込み方です。

差し込む位置は2枚目カードのすぐ上で、2枚目カードに密着するところに戻します。

右手首を少しひねって、観客側右コーナーが先に入っていく形を取ります。そうして、観客側右コーナーが小指に当たったら、カードの向きをデックと平行にして、小指と親指の付け根でターゲットカードを保持し、右手をターゲットカードから離します。

ターゲットカードの3/4ほど、つまりほとんどが手前エンド側から突き出た状態ですが、真ん中に入れたと錯覚してもらうためには、この状態を視認させることが重要です。

ターゲットカードを押し込む

続いて、ターゲットカードを押し込みますが、右手の甲が上を向く形で親指で押し込みます。
デックの左サイドの開きは親指で隠れますが、右サイドは丸出しなので、その部分を右手の甲をスクリーンに隠すようにすればいいでしょう。僕は、右手を安定させるために中指を観客側右コーナーに当てるようにしています。

ただし、ここで最も重要なのは、押し込み方よりも左手の角度で、これは録画したり鏡に映したりして研究していただきたいところですが、観客から見て、押し込むターゲットカードがちゃんと目に入って、かつ、ターゲットカードとティルトカードの段差も感じ取れる角度をしっかり取るということです。

左手を上げすぎたらターゲットカードが視界から消えてしまうし、下げすぎるとターゲットカードとティルトカードの段差を感じられなくなります。観客視点でちょうど良い角度を探してみてください。

ティルトの解消

最後に、ティルトカードを元の高さに戻しますがここで気を抜くと、とんでもないことになってしまいます。
何も考えずにティルトを元に戻すと、観客目線では突然カードがストンと落ちたように見えるはずです。

ティルトのことを知らない人がこの現象を見たときにどう感じるのかは、すでにティルトを知ってしまっている自分からはわからないんですが、実際にはどうなんでしょうね?
すぐにカラクリに気付くのか、理解が追いつかずに混乱するのか、正直わかりませんが、演じているマジックの本筋から観客の意識が外れることは間違いなさそうなので、これには気を付ける必要がありますね。

じゃあどうするかですが、ティルトカードがストンと落ちるのを目撃されなければなんでもいいわけで、例えば、ドリブルするか、例えば、手前エンドをシャッとリフルするか、もしくはデックを回転させながら周りを揃えるとか、そんな感じでいいかと思います。

ここまでがティルトの基本的なやり方です。

ティルトの説得力の上げ方

ここからは、アイディアを追加してティルトの説得力を上げる方法を3つ紹介します。

ワンハンド・ゲットレディの追求

まずはここから。ティルトの準備の動きをできる限り小さくしましょう。
これを実現するには、ブレイクの取り方を工夫する必要があります。

前回のブレイクの解説で、片手でのトップ1枚のブレイクの取り方として3つの方法を紹介しています。

ティルトの基本的なやり方で用いた「通常のプッシュオフ」

そして、プッシュオフ幅を極めて小さくした「回転プッシュオフ」

それから、プッシュオフを一切排除した「プレッシャー・ブレイク」の3つです。

細かいやり方はブレイクの解説を見ていただくとして、回転プッシュオフかプレッシャー・ブレイクを使うことで、ゲットレディの動きを小さくできるので試してみてください。

プッシュアウト・サトルティ

一度わざと差し込みに失敗してみせる一種のサトルティです。技術的には簡単で、本当に真ん中あたりに入れようとしていると錯覚させる手法です。

「プッシュアウト・サトルティ」っていう名前はここで勝手に付けてます。考案者の付けた正式名称みたいなものがあるなら、誰か教えて下さいな。

さて、デックの手前エンド側の真ん中あたりを、右手のターゲットカードで雑に押すと、観客側エンドから押されたカードが飛び出します。いや、本当は人差し指があるので飛び出すわけないんですが、”ちゃんと”人差し指をどけて、真ん中あたりのカードを飛び出させて「そのあたりに入れようとしたけど一度失敗した」という演出をします。

飛び出たカードを人差し指で押し戻して、あらためて差し込み直すときに技法を行います。

何気ない動きに見えて、説得力が増す良い手順だと思います。

コンビンシング・ティルト

左サイドを真ん中で分けて見せてそこに差し込んだように見せるティルトのことです。
ちなみに、コンビンシング(convincing)は「説得力のある」という意味です。

やり方は、ティルトを保持したまま親指で左サイドを開きます。ティルトを保っているのは親指、中指、薬指です。

そして、開いた左サイドにターゲットカードを差し込んだと見えるように左手首の角度を調整しつつ、通常のティルト同様、保持したティルトにターゲットカードを差し込みます。実際に鏡やカメラで確認していただきたいですが、肘から先を持ち上げて、デックが演者側に傾く角度がちょうど良いように思います。

ここから先は、ターゲットカードを差し込んだ直後の話です。
差し込んだターゲットカードが小指に当たった瞬間に左サイドを閉じ始め、閉じ終わるとともに親指付け根でターゲットカードの観客側左コーナーを保持して、右手を離します。これで、通常のティルトと同様に「奥行きの錯覚」を起こさせる状態に持ってこれることになりますね。

つまり、左手の動きは、ティルト状態を保持したまま左サイドを開いて、ティルト状態を保持したまま左サイドを閉じるということです。少し練習が必要かと思いますが重要な動きです。コツとしては、左サイドを開く前と閉じたあとで、左手をまったく同じ形に保つことですかね。

あとは、通常のティルトと同じ動きです。ターゲットカードを最後まで押し込んで、ドリブルやリフルなどでティルトを解消して技法を終えます。

まとめ

以上がティルトの解説でした。
ティルトの概要でも話した(書いた)とおり、アンビシャス・カードで使われることが多いように感じますね。ティルトで2枚目にコントロールして、ダブル・リフトでトップに上がってきた、と見せるやり方ですね。

また、初めてティルトを実際に人に見せるときは「ホントにこんな子供騙しみたいなのが通用するかな?」と不安になるかもしれません。今では簡単にスマホで動画を撮れるので、しっかり練習してカメラに向かってやってみてください。映像を見て、演じた自分が錯覚起こすと思うのでそれで自信をつけましょう。

では、また。

sobogaの蛇足

左サイドを開く「コンビンシング・ティルト」と、ティルトをしない「ティルトレス・ティルト」の話し。

ネットで公開されている映像なんかを見て、もったいないなぁと思うのは、通常のティルトと比べてコンビンシング・ティルトの場合、開いた左サイドを閉じる時点で、ターゲットカードをすべて押し込み済みの状態で技法を終わらせてしまっているものが多いことです。

これだと、ティルトの持ち味である「この状態」を観客が目撃することがなくなってしまうわけですね。ティルトはあくまでもこの「奥行きの錯覚」を見せることで、デックの中ほどにカードを戻したと思わせる技法です。別名「デプス・イリュージョン(depth illusion)」と呼ばれる所以ですね。

個人的見解なので蛇足で語っていますが、今やった左サイドを閉じる時点でティルトを終わらせてしまうコンビンシング・ティルトや、

コンビンシング・ティルトの動きで、実際にはティルトをしないで直接トップにダーゲットカードを戻す「ティルトレス・ティルト」なんかは、ただ単に角度と早い動きでごまかしているだけの技法で、「説得力のある」技法としては否定しています。

トップや2枚目にコントロールするなら手法、手順、技法はいくらでもあるので、わざわざ角度と早い動きでごまかすだけの「逃げ技法」を使う必要はないでしょう。

ていうかそれなら普通のティルトをしましょうよ。そのほうがよっぽど説得力があると思いますよ。

あらためて、ではまた。

参考文献

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