【魔法のレシピ #012】『ファロー・シャッフル』 – 見た目は華麗で派手、中身は数理的で知的なシャッフルを学ぶ♠

Text by magician soboga

目次

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はいどうもsobogaです。
今回は、見た目は華麗で派手なのに、その実、非常に数理的な側面を持ったシャッフル「ファロー・シャッフル」の解説です。

特に、52枚のデックを26枚ずつに二分して、きっちり1枚ずつ噛み合わせて行うものを「パーフェクト・ファロー・シャッフル」と呼び、パーフェクトではないものを、部分的なという意味の「パーシャル」を付けた「パーシャル・ファロー・シャッフル」と呼んだりしますが、今回はパーフェクトなほうの解説です。パーフェクトができれば、パーシャルは簡単にできますからね。

Trick Libraryでは、「カードの基礎」の「シャッフル」「フラリッシュ」の2つのカテゴリに分類しています。難易度は[中級]です。

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先に、技法名の問題について解決しておきましょう。というのもこのシャッフルの名前、英語表記だと「Faro shuffle」なんですが、この「Faro」の部分、日本におけるカタカナ表記では最も表記ゆれの激しい技法のひとつなんですね。ざっと数えて8つあります。

  • フェイロ
  • フェイロー
  • フェロ
  • フェロー
  • ファロ
  • ファロー
  • ファーロ
  • ファーロー


いったいどれが正しいかといえば、カタカナで表記する以上、全部間違いといえちゃうんですよね。実際にアメリカ人の発音を聞くとどれでもないというのが正直なところです。

カードマジック事典は「フェイロ」表記ですが、「フェイ」始まりが最も実際の発音から遠く「ファロー」がいくぶん近い気がします。実際には「ァ」でも「ェ」でもないその中間音で、「ロー」ではなくて「ロゥ」ですけどね。なんとなく「ファラオ」に聞こえていたら正解で、「faro」の語源は「Pharaoh(ファラオ)」らしいです。

ということで、Trick Libraryでは、個人的に一番近いと感じる「ファロー」を採用しています。異論はあるかと思います。けど、カタカナ読みする以上、どれにしたところで違和感は残るので、もうそういうものだと思ってください。

それでは解説に参りましょう。

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ファロー・シャッフルのやり方

パケットの分け方

パーフェクト・ファロー・シャッフルを行うには、きっちり26枚ずつに分ける必要があります。

52枚のデックをエンド・グリップで持ち、サイドが正面に見えるように立てて、左手でアウト側エンド寄りをつかみます。

次に、右手でイン側エンド寄りのトップ26枚を目算でつかんだら、左右の手を軽く離して、右手にトップ側26枚左手にボトム側26枚をそれぞれ持ちます。

この時点で、もう一度26枚ずつになっているか確認しましょう。といっても26枚をいちいち数えるのは不可能で、両パケットの厚みが同じであるかを目算して、同じ厚みであれば26枚ずつであると判断します。

これはぜんぜん不可能なことではなく、最も簡単なエスティメーションの部類になるので、練習を重ねることで可能となるでしょう。

パケットの持ち方

26枚ずつに分かれたら、それぞれのパケットの噛み合わせるエンドを、お互いの平面部に押し付けて平らに整えつつ、それぞれのパケットの持ち方も調整します。

左手から見ていきましょう。

左手は、パケットを下から支える形で、親指が左サイド人差し指はアウト側エンドで、中指・薬指が右サイドです。

そして、小指が少し特殊で、小指の指先半分にイン側エンドを乗せて、小指で下から上に圧力をかけて、26枚のカードが隙間なく密着している状態を作り出しています。パケットの上から見ると、小指の指先半分は見えています。

続いて右手。

右手は、パケットを上からつかむ持ち方で、親指が左サイド小指はイン側エンドで、中指・薬指が右サイドです。

そして、右手は人差し指が特殊で、人差し指の指先半分をアウト側エンドに乗せて、人差し指で上から下に圧力をかけて、26枚のカードが隙間なく密着している状態を作り出しています。パケットの下から見ると、人差し指の指先半分は見えています。左手の小指と完全に真逆のことをやっているわけです。

噛み合わせ方

さて、ここまできたら噛み合わせるだけです。とはいえ、ここの説明、言語化するのがめちゃくちゃ難しいんです。言語化できない自分はまだまだ未熟だなと感じるところですが、なんとか文章にして説明しますね。

左手の小指の指先半分、見えているところに右パケットのアウト側エンドをそっと乗せ、エンド同士をピッタリ合わせたら、左手の小指と右手の人差し指で両エンドの境目を軽く押さえます。

で、ここが重要です。
左右のパケットの高さが完全に同じ位置にあったら、このあと噛み合うわけがないんです。カード1枚分の0.3mmだけ、どちらかのパケットを上か下にズラしましょう。ここでは右パケットを上にズラすことにします。0.3mmです。目で見てわかるくらいズラしてしまうとやりすぎです。あれ?今ズラせたかな?見てもわからないなぁくらいです。

とりあえずズラせたとしましょう。ここから押し込み始めます。
左手の人差し指と右手の小指を使って、両脇からゆっくりと力を込めます。急がずゆっくりです。まだ何も起きません。

そうしたら、パケットの境目を中心にわずかに山なりにします。これでボトム側に、より力が加わることになります。

ボトム側に力が移ったのを感じたら、パケットの境目を押さえていた左手小指と右手人差し指をそっと離します。それと同時にさらに力を強めた瞬間…

ボトムからトップへ順番にスッと噛み合っていくはずです。

どうでしょう?文章で伝わったかどうかちょっと自信ないですが、写真も参考にしてください。

噛み合わせのコツ

ホントに申し訳ないんですが、コツをよく聞かれるんですが、コツこそ言語化するのが難しくてですね、一度スッと噛み合っていく感覚をつかんでしまえば、できなかったときのことを思い出すのが難しいって感じになると思うんですよね。歯切れが悪い言い方になってしまいますが。

噛み合う感覚をつかむまではパーフェクトにこだわらず、パーシャルでもいいからまずは感覚をつかむことを優先したほうが早道かもしれません。感覚をつかんでしまってから精度を上げていく感じがいいかもしれませんね。

湾曲させてウォーターフォール

噛み合わせに成功したら、ここから片手でデックを大きく湾曲させます。リフル・シャッフルとはまた違ったやり方ですね。

両パケットを1cmほど噛み合うまで押し込んだら、再び、左手の小指と右手の人差し指で噛み合い箇所を押さえましょう。

そこから、左手の親指と中指で噛み合っているところの両サイドをつかんで持ちます。人差し指は下から支えています。

続いて、右手を大きく開き、デックを上から覆うようにつかんで、握りつぶすように湾曲させます。このときに右手人差し指の付け根を、トップ側の噛み合っている境目にしっかりと押し付けてパケット同士が弾けないようにします。

このあとのウォーターフォールは簡単です。「ウォーターフォール」っていう言い方についてはここではごちゃごちゃ言うのは控えておきましょう。この名前については「リフル・シャッフル」の回でごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ書いているのでそちらを見てみてください。

ここから左手の話です。下から支えていた人差し指だけを残し、それ以外の指を開いて、落ちてくるカードを受ける準備をします。

そして、支えの人差し指をどかした瞬間にカードがザーっと落ちてきます。あとは慣性に従ってすべてのカードが落ちれば終了です。

どっちが上?下?

最後に、インとアウトの話をしておかなければなりません。

先ほどの説明では、パケットを噛み合わせるときに右のパケットを「上に」カード1枚分の0.3mmズラしましたが、これがインとアウトのアウトです。

画像の引用元はWikipediaである。今回の解説とは左右のパケットの関係が逆なので注意が必要。

今回の解説どおりやると、右手にトップ側の1〜26枚目で構成されたパケット、左手にボトム側の27〜52枚目で構成されたパケットを持つことになります。そして、右手を1枚分上にズラして噛み合わせると、シャッフル後のならびは1、27、2、28・・・と並んでいって、最後が・・・25、51、26、52となります。この、1枚目と52枚目が外側つまりアウトに来るやり方が「アウトなファロー・シャッフル」ということです。

これを、右パケットを「下に」ズラせば、結果の並びは27、1、28、2・・・51、25、52、26となって、1枚目と52枚目が内側(イン)に来ることになります。これが「インなファロー・シャッフル」です。

ファロー・シャッフルを用いた数理的なトリックをやる場合には、このインとアウトが重要になるので、これはしっかりと把握しておく必要があります。

ファロー・シャッフルの性質

ここまでがやり方の解説です。
続いてファロー・シャッフルの性質を見ていきましょう。

見た目のこと

まずは見た目のことから話しますが、技法の見た目が非常にテクニカルで華麗に見えるということです。フラリッシュ要素が強いってことですね。

一般の観客に対しては、このシャッフル一発で「あ、このマジシャン上手い」と思わせることができる可能性が高いので、演技の冒頭でファロー・シャッフルをやってイニシアティブを取るっていうのも演出としてはありだと思います。

ただし、いろんな動画で何回も言っていることですが、フラリッシュ要素の強いことをドヤ顔で乱発すると、確実にウザがられるのでそのへんは要注意です。

数理的なこと

最も有名な数理的なことでいえば、アウトなファロー・シャッフルを8回行うと元通りの並びに戻るっていう原理でしょう。

実際に試してみて欲しいところですが、注意しなければならないのは「アウト・シャッフル」の場合にのみ8回だっていうことです。アウトであれば何回ファロー・シャッフルを繰り返しても、1枚目と52枚目は常に1枚目と52枚目に固定されるからであって、これをインでやると、例えば1枚目にあったカードに注目すると、1回のファローで2枚目へ、2回で4枚目へ、3回で8枚目へと、どんどん奥に埋もれて行くのは容易に想像できると思います。実際にイン・シャッフルで元々1枚目にあったカードが元の1枚目に戻ってくるのには、55回のイン・シャッフルが必要です。

本当のことを言うと、実際に試すよりも計算したほうが早いんですが、「マジで!数字の話だけはやめてくれ!」という声が聞こえてきそうなので、ここではそういうもんだという話に留めておきます。

一応、ファローで数理トリックを考えてみたいとか、そうじゃなくても単純に計算方法を知りたいという方のために、現在、東北大学・情報科学研究科の宗政昭弘(むねまさあきひろ)教授が1999年に九州大学で行った「並び替え操作の計算法」という講義で、まさにファロー・シャッフルのインとアウトの考え方や計算方法をまとめてくれている資料があるので、それのリンクを紹介しておきます。気になる方はそちらを参照してみてください。数字アレルギーな方は間違っても開いちゃダメなんで気をつけてくださいね。

【並び替え操作の計算法】
https://www.math.is.tohoku.ac.jp/~munemasa/documents/lecturenote.pdf

混ざり具合について

最後にファロー・シャッフルの混ざり具合についてです。
ファロー・シャッフルは、リフル・シャッフルよりも更に細かく混ぜることができるシャッフルであるというイメージを持っている人が多そうですが、特にパーフェクト・ファロー・シャッフルでは、シャッフル結果のカードの位置遷移が規則的過ぎて、よく混ざっているかという観点で見ると否定するしかなくなります。

一部のゲームではこの特性を活かしたシャッフルが必須のものもありますが、大半のゲームではランダム性のほうが重視されるため、複数回のカットと併用しなければ使い物にならないでしょう。

そして、ここからが大事な話ですが、マジックにおいてはどうかというと、カードの並びのランダム性よりも、観客から見てよく混ざっていそうというイメージのほうが重視されるため、そういった意味での有効性は高いと考えられます。

また、カードの並びに意味のあるスタック・デックやメモライズド・デックを使うときに、あと1回パーフェクト・ファロー・シャッフルをやれば目的のスタックやメモライズドなどのセットアップ状態になるという、1ファロー手前の状態で箱にしまっておくという手法が考えられます。

これをやれば、演技冒頭でパーフェクト・ファロー・シャッフルをやってイニシアティブを取りながら、心の中でドヤ顔決めつつデックのセットアップが完成するという、ムフフな状況を作り上げることができますね。ぜひ参考にしていただきたいところです。

まとめ

はい、お疲れさまでした。ファロー・シャッフルの徹底解説は以上です。
僕もいつでもどんな状態のデックでも完璧にできるようになるまでは、相当な時間が掛かった記憶のある難しめの技法ではあるので、焦らず気長に練習してみてください。

では、また。

参考文献

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