【魔法のレシピ #013】『ダブル・リフト』 – 最初のシークレットムーブであり、最後のシークレットムーブかもしれない、実に奥の深い技法♠

Text by magician soboga

目次

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はいどうもsobogaです。
今回は、マジックを学び始めて一番初めに通るであろうシークレットムーブの「ダブル・リフト」の解説です。

実際に一番初めかどうかは人によるでしょうが、ここでいうシークレットムーブとは、表からの見え方と裏でやっていることが違う、裏の仕事が発生する技法全般のことです。広義の意味でのミスディレクション技法ですね。ミスディレクションのことを語り始めたら、動画一本(解説記事一本)では時間が足りなくなるのでここではやめておきます。また今度。

さて、ダブル・リフトをひと言でいうと、「1枚のカードを表返したように見せて、2枚のカードを表返す」技法です。細かくいえば、2枚のカードをデックから取り上げる行為を「ダブル・リフト」、その取り上げた2枚を表返すことを「ダブル・ターンオーバー」といいますが、ほとんどの場合、取り上げた2枚を表に返さないことはありえないので、取り上げて表返すところまでをまとめて「ダブル・リフト」と呼んでいます。

Trick Libraryでは、「技法」の「ダブルリフト」のカテゴリに分類しています。難易度は[中級]です。

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ダブル・リフトには様々な手法がありますが、今回はダブル・リフトの解説第一弾として基本中の基本なやり方です。今後、第二弾、第三弾・・・と続きます。

それでは解説していきましょう。

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ゲットレディ(ブレイクを取る)

今回解説する基本のダブル・リフトは、技法の準備としてブレイクを取るところから始まります。この、ブレイクを取るという準備のことを「ゲットレディ」と呼びます。

そして、ダブル・リフトの難易度は中級に設定しましたが、この難易度に関しては、リフトしてターンオーバーするまでのダブル・リフトという行為自体よりもブレイクの難しさに依存してます。

ブレイクには簡単な方法から難しい方法まで様々な手法が存在しますが、以前、14種類のブレイクを解説した記事の中で、ダブル・リフトのゲットレディに使える方法を5種類解説しています。以下のリンクをたどっていただいて、その解説の目次「特定の枚数でのピンキー・ブレイク」に飛べば確認することができます。

【魔法のレシピ #006】『ブレイク』 – 簡単なものから難しいものまで色んなブレイクの取り方14種類詰め合わせ!シチュエーションによって使い分けよう♠

ここでは、ブレイクの取り方については解説しません。トップ2枚でブレイクを取ったところから解説を続けます。

リフトのやり方

単に2枚のカードという意味ではなく、2枚のカードがぴったりと重なって1枚のように見える状態のことをダブルカードと呼びます。リフトは、このダブルカードをデックから切り離す作業です。やっていることはめちゃくちゃ単純で、ダブルカードを右手でつまんで右方向にズラすだけですが、表からの見え方は、つまんだ1枚のカードを左手の親指で右方向に押し出しているように見えなければなりません。

ダブルカードをつまむ

ダブルカードの右サイド真ん中あたりを、右手の親指と中指でつまみますが、工程を4つに分けて説明しましょう。

① 右手がデックに近づくと同時に、左手親指の第一関節を曲げて指先をデックの真ん中あたりに位置させる。

実際には、左手親指でプッシュオフすることはないですが、これからプッシュオフするかのように見せるための工夫です。指先を曲げた親指がデックの上に乗っているように見えればいいだけで、親指での圧力をかける必要はまったくありません。

② 右手人差し指でアウト側右コーナーを押さえる。

ダブルカードが崩れないようにするための工夫です。

③ 右手中指をブレイクの端から滑り込ませる。

ダブルカードを露骨に持ち上げるようなことはせず、手前右コーナーのブレイクの端から右手中指を横に寝かせた状態で滑り込ませ、右サイドの真ん中あたりまでスムーズにスライドさせます。

④ 右手中指が右サイドの真ん中あたりまで来たら、右手の親指と中指でダブルカードをつまむ。

力まず、1枚のカードと同じようにつまみます。

この4つの工程をひと息でスムーズに行います。

ダブルカードを右にズラす

ダブルカードをつまんだら間髪入れずに右方向にズラしていきます。

ダブルカードの左サイドをデックから離さずに右方向に移動させてください。このときに、ダブルカードをデックの上を引きずるように運ぶと、デックの抵抗と右手親指の圧力でダブルカードが湾曲します。右手の人差指、親指と中指の2点の支えと、デックに触れている左サイドの押さえ、それから湾曲していることで、ダブルカードが完全にロックされているので滅多なことでは崩れたりしません。慎重さを見せずにラフに、そしてライトなタッチで行ってください。

そして、ここでのダブルカードの動きに影響を及ぼしているのは右手だけですが、左手親指の動きは重要です。あたかも1枚のカードをプッシュオフしているかのように、ダブルカードの動きに合わせて左手親指を伸ばしていきます。指が伸び切ったところで左手親指はお役御免です。デックの左サイドに親指を戻してください。

ダブルカードはそこからさらに右に移動させます。ダブルカードの左サイドとデックの右サイドが合わさり、本のページを開いたような形になったところが移動の終了ポイントです。

ターンオーバーのやり方

ターンオーバーは、開いた本のページを閉じるような動作でカードを表返し(または裏返し)ます。

よくあるダメなやり方は、ダブルカードが崩れることを恐れて、カードを返し終えるまでつかんだ指を離さないやり方です。1枚のカードのときを考えてみてください。なんでもない1枚のカードめくるのに、そんな慎重な振る舞いをする人はいませんよね。ここは大胆に、どちらかというとラフな動きをしなければならないところです。

やり方は単純で、右手の中指以外の指をダブルカードから離して、カードをつまむために曲げていた中指を伸ばせば、カードは勝手にひっくり返ります。中指が伸び切ったときには、ダブルカードは右手から完全に離れるのが正解です。

ひとつコツのようなものをお伝えすると、ダブルカードを右にズラすと同時に、デックを持った左手で迎えに行くとダブルカードの移動距離を短くできて、動きの安定感が増すかと思います。

ここまでが、ダブル・リフト〜ダブル・ターンオーバーのやり方です。
ただし、この技法はこの時点ではまだ気を抜けませんね。表返したダブルカードは表にしたままということはまずあり得ません。このあと裏返すことによって技法が完結します。ということは、もう一度ゲットレディする必要があるわけですが、ターンオーバーと同時にブレイクを取ることができれば効率も良くなるし楽になります。というよりは、表の状態では雑なダブル・プッシュオフもスプレッドもドリブルもできないので、ピンキー・カウントでブレイクを取る以外には、ターンオーバーの流れで上手いことブレイクを取りたいところです。ということで、続いてはターンオーバー後のブレイクの取り方について3つの方法を解説します。

ターンオーバー後のブレイク

インジョクまたはアウトジョグから両手を使う方法

まずは簡単な方法から。
イン側かアウト側に7〜9㎜ほどズラした状態でターンオーバーして、それを右手で直すついでにブレイクを取る方法です。特に難しい動きもなく、ストレスなくできると思います。

インかアウトにズラす幅について、一見、小さくズラしたほうがよさそうな気がするかもしれませんが、あまりに小さなサイズだと、右手を使うまでもなく左手だけで直したほうが自然な動きになってしまいます。バイシクルの白枠が5mmくらいなので、それ以上の幅でズラすことで右手を使う理由が生まれます。

カードマジック初学者の方はここからでいいと思いますが、右手がデックに近づく理由が、自らズラしたカードを直すためというマッチポンプ的な違和感は否定できないので、できるだけ早く、次に挙げる片手で行う方法をマスターしたほうがいいでしょう。

アルトマン・トラップ

片手で行う方法その1です。アルトマン・トラップ、またはオルトマン・トラップと呼ばれる手法です。
ターンオーバーしたカードを、デックの上に重ならないように親指付け根の膨らみ部分で受けて、左サイドにできたブレイクを小指(右サイド)に移す手法です。「デックの上に重ならないように親指付け根の膨らみ部分で受ける」ことを”トラップ”と表現した技法名です。

通常のターンオーバーでは親指がカードに干渉しないようにどけますが、これをあえて、親指付け根の膨らみ部分がデックにせり出したままターンオーバーして、ダブルカードをデックではなく親指の膨らみに着地させます。これによって、ダブルカードの左サイド全体が浮いたブレイクを作り出します。

続いて、膨らみ部分でブレイクを保持したまま、親指の指先でダブルカードのアウト側左コーナーの浮き上がりを潰しつつ、右サイドに掛かっている薬指と小指をカードから離すと同時に、アウト側エンドを人差し指で押さえると、イン側エンドのみがデックと平行に浮き上がった、いわゆるティルト状態になります。

ティルトまで持ってこれたら、親指付け根の膨らみ部分をそっとデックから離すことで、左サイドは閉じて小指でのブレイクが完成します。

細かく見るとやることが多く大変そうな印象を受けるかもしれませんが、原理は単純で一つひとつの動きも特に難しいことはありません。ただし、「単に1枚のカードをターンオーバーしただけ」という表からの見え方を考慮すると、トラップからピンキー・ブレイクまでの裏の仕事が不自然極まりない動きだといえます。

すべての動きを途切れることなくスムーズに、かつすべてを最小の動きで行いながら、ミスディレクションも欠かせない技法なので、全体のクオリティを上げるという意味ではそこそこの練習が必要になります。

レバレッジ・ブレイク

片手で行う方法その2です。
解説動画の、冒頭のパフォーマンス映像でもやっていますが、最小限の動きでブレイクを取り直せるので個人的に最もおすすめするやり方です。正直なところ、この方法を覚えてから10年ほど「アルトマン・トラップ」は使ってません。技法名に関しては、カードがテコの原理の要領で動くため、ここで勝手に付けた名前です。

両手を使う方法と違ってアウト限定のやり方で、ズラし幅もできるだけ小さく、最大でもカードの白枠5㎜以下に留めたアウトジョグを作ってください。理想は2〜3mmくらいです。

小さなアウトジョグでダブルカードがデックに着地したら、すかさず親指でアウト側左コーナーのインデックスあたりを押さえ、人差し指はアウトジョグに引っ掛けます。右サイドの3本の指は、中指を残して、薬指・小指をダブルカードからわずかに離します。

そこから、人差し指で下方向に圧力を掛けると、親指の押さえがある結果、手前右コーナーのみが浮き上がります。

圧力を強めに大げさにやると上の写真のようになりますが、ブレイクに必要なだけわずかに浮き上がるよう人差し指の圧力を調整してください。

また、注意点としては、人差し指の圧力の前に薬指・小指をダブルカードから離す、という順番が大事です。この順番を逆にしてしまうと、圧力が掛かってから抑えの指が離れることになって、圧力の調整が効かず、手前右コーナーが大きく派手に跳ね上がる結果になってしまいます。

さて、話を戻して、適切な量だけ手前右コーナーを浮かせたら、人差し指の圧力を手前方向に移行させてダブルカードをデックに揃えつつ、小指を浮き上がった隙間に押し当ててブレイクを完成させます。

この技法のいいところは、ターンオーバー直後に発動してブレイクを取り直してもいいし、ターンオーバー後、親指と人差し指をダブルカードに乗せた状態で止めても不自然な点が少ないので、その状態を保持したまま観客に話しかけるなどして、テクニカルなミスディレクションを避けることもできることです。

特定の観客の目を見ながら話しかけて、観客全員の意識が、話しかけられた観客に移ったところで技法を発動すれば楽にブレイクを取り直せるし、少しテクニカルな方法としては、デックを持った腕を観客側に突き出しつつ、表返したカードを忘れないように念を押すようなセリフをいいながら、伸ばした腕を戻す動きの中で技法を発動すれば、ブレイクを取る動きを視認されることはまずありません。

まとめ

以上、ダブル・リフトの解説でした。
この技法は、表からの見え方の不自然さを取り除こうと思うといくらでも改善点が見つかる、「終わりなき改善を求められる技法」です。

単に1枚のカードをターンオーバーするときと比較した不自然ポイントをざっとまとめると、

  • ゲットレディとしてブレイクを取る必要がある
  • プッシュオフの前にカードをつかんでいる
  • リフト&ターンオーバーが必要以上に慎重になりがち
  • ターンオーバーの着地を普通にできない(アウトジョグ、インジョグ、左サイドを浮かせるなど、何らかの工夫が必須)
  • ターンオーバー後にブレイクを取り直すための何らかの動きがある


こんな感じでしょうか。マジシャンとしては、これらの不自然さをできるだけ感じさせないために、完璧なダブル・リフトを目指したいと思う反面、完璧なダブル・リフトなんてものは存在しないと思っている自分もいたりします。どこかで妥協しなければならないのが現実で、日々、いま時点での完璧さをアップデートしていくしかありませんね。

さて、次回もダブル・リフトの解説です。次のダブル・リフトもゲットレディの必要な技法ですが、ダブルカードをリフトする前(右手でつかむ前)にプッシュオフする、「ダブル・プッシュオフ・ダブル・リフト」の解説です。

では、また。

参考文献

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