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はいどうもsobogaです。
今回は、ブレイクなしでダブルリフトを行う「ストライクダブルリフト」の解説です。
スライトばかりを追いかけていた若い頃に、ブレイクを取らずにダブルリフトできないかを試行錯誤した結果できたやり方で、今回は特に参考文献とかはありません。
あとになって「ストライクダブルリフト」という技法名を知りましたが、最も合理的であろうやり方をしているので、おそらく多くのマジシャンも同じようなやり方をするんじゃないでしょうか。たぶん。
Trick Libraryでは、「技法」の「ダブルリフト」のカテゴリに分類しています。難易度は[中級〜上級]です。指先の感覚がものをいう技法なので中の上といったところでしょうか。
見た目の自然さでいうと、プッシュオフの前にダブルカードをリフトするので普通のダブルリフトとそう大差はありません。他のダブルリフトに対してのアドバンテージは「ブレイクを取る必要がない」という一点のみですが、例えるなら溜めモーションのないパンチみたいなもので、前振りの気配を感じさせることなくダブルリフトを決めることができるのは大きな利点ではあると思います。
まあ、これだけだと技法マニアを満足させるだけのものでしょ?という感じで、難しさの割にはコスパが悪い気もしますが、実際の現場ではまあまあ使いどころはあります。詳しい使いどころについては解説のあとで紹介しましょう。
それでは解説です。
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押しビベルを作る
ストライクダブルリフトのキモとなる準備がビベルです。親指を軸に考えて、右方向に押して作るビベルを「押しビベル」と呼んでいますが、ここでは大きく押しビベルを作って、リフトする右手の指を目的の枚数のカードに引っ掛けやすくします。
ビベルなしでリフトするのは不可能に近いので必須の準備です。
ビベルについては下記のリンクから確認できますので、そちらを参照してください。
リフトのやり方
このリフトこそが他のダブルリフトとは一線を画すやり方で、ビベルの傾斜を頼りに指先の感覚で2枚のカードを一気にリフトアップします。
まずは、人差し指をアウト側右コーナーに当てます。これは普通のダブルリフトと同じ動きです。
リフトに使う指は、リフト後の動きを普通のダブルリフトと同様にしたいので中指です。細かく見ると中指の、上の画像の印を付けた部分を使います。
中指をビベルの下に潜り込ませて、最も感覚の鋭い箇所を目的の枚数、ここでは2枚にしましょう、2枚に軽く押し当てて、上方向に引き上げます。
続いて、中指の指先の厚み分だけ持ち上げたら、中指の指先から隙間に滑り込ませ、そのまま中指を右サイドの真ん中あたりまでスライドさせます。
中指が真ん中あたりまできたら、親指と中指でダブルカードをつまめばストライクダブルリフトの完成です。
このあとのダブルターンオーバーは、普通のダブルリフトとまったく同じですのでここでの解説は割愛します。詳しくは「ダブルリフト」の解説記事を確認してください。下のリンクからどうぞ。
ストライクダブルリフトに関しては「このコツを頭に入れれば誰でもできるようになります」みたいな嘘くさいことは言いません。完全に感覚に頼ることになるのでそれ相応の練習量が必要なことは否定できません。
1枚〜4枚くらいまで、感覚でリフトし分けられるように練習することをおすすめします。1枚と2枚の違い、2枚と3枚の違い、3枚と4枚の違いがわかれば、まず間違いなく目的の枚数をリフトできるようになります。
また、枚数の違いを感じられるようになれば、万が一枚数をミスしたときもリカバリが効くようになります。では続いて、ミスしたときのリカバリ方法の解説です。
リフトミスのリカバリ方法
目的の枚数より多く持ち上げてしまった場合
まずは枚数が多い場合のリカバリ方法から。
具体的には、2枚リフトするつもりが3枚持ち上げてしまった場合を想定して説明しましょう。
この場合は特に難しいことはありません。これは単純な話で、3枚引っ掛けてしまったことがわかったら、中指の指先の力をわずかに抜いて余分な1枚を落とせば簡単にリカバリ可能です。
目的の枚数より少なかった場合
続いて枚数が少ない場合の方法です。
2枚のつもりが1枚しか取れなかった場合ですね。
練習を重ねて中指の感覚が磨かれてくると、万が一の瞬間に、というかカードが持ち上がる直前に「1枚しかついてこない」ことがわかるようになると思います。
それを感じ取ったら、1枚のカードは第一関節あたりに引っ掛けたまま、すかさず第一関節をクッと曲げて爪の横あたりを使って2枚目のカードを取り直してください。
そのまま引き上げれば2枚のカードが合わさります。
リカバリすら上手くいかなかった場合
もしこれらのリカバリが上手くいかなかったときには、一旦、完全に指を離してもう一度取り直すしかありません。好ましくないパターンではありますが、違ったカードの表を見せてしまうような完全なるミスをするよりはまだマシです。
ナノダブルステップ
最後に、ターンオーバー後のブレイクについてです。
ストライクダブルリフトはなんらかの事情があって、ブレイクなしでダブルリフトを行うことが多いと思うので、ダブルカードを表に返したときにはしっかりとブレイクを取ればいいかと思います。
ターンオーバー後のブレイク取りに関しても「ダブルリフト」の解説記事で詳しく解説していますのでそちらを参照してください。
では、この章のタイトル「ナノダブルステップ」はなんのこと?ってなると思いますが、こちらは、ブレイクを取らない(取れない?)事情があろうとなかろうと、表返すときと裏返すときで動きを揃えたいとか、ダブルリフトは基本すべてストライクでいきますという奇特な人向けの「ブレイクは取らないけど、裏返すときは表のときよりは楽にする」ための方法です。
一行で表すと、「ダブルターンオーバー後にダブルカードで極小のステップを作って、ビベルよりも指を引っ掛けやすくしてリフトを簡単にする」です。
実際の動きを見てもらうのが手っ取り早いと思いますので下の動画も参考にしてください。
※動画で確認するにはこちらから。該当の解説箇所から再生されます。
上の画像のように右サイドのイン側に、1㎜以下の小さなものですがダブルカードのステップができあがります。これをナノダブルステップと呼んでいます。極小のステップですがビベルと比べると遥かに指を引っ掛けやすく、慣れてしまえば100%リフトが成功するはずです。
やり方ですが、ダブルターンオーバー時に5㎜程度アウトジョグして、それを人差し指で叩くことでわずかなダイアゴナル状態を作っています。
人差し指が叩く位置はアウト側エンドの真ん中からやや右あたりで、人差し指がその位置を叩いた一瞬後、感覚的にはほぼ同時に親指で押さえることで、言われなければわからない程度の本当に小さなダイアゴナル状態になります。
人差し指で叩くとか親指で押さえるとか言いましたが、スピードや力では上手くいきません。軽いタッチで実現可能なので、どれくらいの速度で、どれくらいの力で、どれくらいのタイミングで上手くいくかは、何度も繰り返してコツを掴んでください。
この技法を使えばこのように、楽に何度でもブレイクなしのダブルリフトを繰り返すこともできるようになるので、習得する価値はあるかと思います。
ちなみに「ナノ”ダブル”ステップ」と名付けましたが、2枚に限らず3枚でも4枚でも上手く機能します。
実際の使いどころ
はい、やり方に関してはこんな感じです。
では、ストライクダブルリフトの実際の使いどころを紹介しておきましょう。実際の現場で使う場面はあるのかと問われれば、そこそこあります。
演技の流れを止めたくないとき
これが一番かと思いますが、冒頭のパフォーマンス映像のように、連続でダブルリフトやマルティプルリフトを繰り返すようなときにストライクダブルリフトの威力が発揮されます。というか、毎回ブレイクを取ってからのダブルリフトでは、リフトする枚数をコロコロ変えるような演技は不可能ですね。
また、連続リフトではなくとも、デックを示してからリフトするまでのタイミングで間を取りたくない場面なんかもあるかと思います。例えば、アンビシャスカードなんかで「カードをデックの真ん中に入れても指を鳴らすだけで瞬時にトップ上がってくる」みたいなのを表現したい場合はまごまごとブレイクを取るよりも、ストライクダブルリフトでスパッとリフトしてしまったほうが、それらしい表現になるんじゃないでしょうか。
実際、sobogaがアンビシャスカードを演じるときのダブルリフトはすべてストライクダブルリフトで行っています。
万が一ブレイクがつぶれてしまったとき
こちらはやや消極的な使い方ですが、実際の現場では何が起こるかわかりません。せっかく作ったブレイクが消失してしまったときの保険としてのストライクダブルリフトです。万が一ブレイクがつぶれてしまったとしても、ブレイクを取り直すことなくダブルリフトできれば安心です。
逆に言えば、万が一があったとしても大丈夫という心理的余裕を持っていればリラックスして演技を行えて、ブレイクをつぶしてしまうようなミスも減るかと思いますがいかがでしょう?
何をどうしても観客の凝視が外れないとき
たまに、本当にたまーに、「何がなんでも見破ります!」と言わんばかりに、演者の手元からの凝視を外さない観客もいたりします。その見方疲れないかなあと思いますが、視線を一切動かさずこちらからの呼びかけにも一切応じずにデックを見続けているような観客です。ブレイクを取る隙もないようなときに、どうしてもダブルリフトしなきゃならない場合はストライクダブルリフトでなんとかする、みたいな感じですかね。
まあでも、えっと、サンプル1の個人的な話になりますが、こういった観客はめったにいませんけどね。感覚的な話ですが100人に1人もいない気がします。もしそういった観客がいて、どうしてもダブルリフトしなきゃならない場合に限る話です。
というわけで、3つほど実際の使いどころを挙げましたので参考にしてみてください。
まとめ
では最後のまとめです。
ストライクダブルリフトまとめ
- ストライクダブルリフトはブレイクを必要としないダブルリフト
- 指先の感覚を頼りにブレイクなしで目的の枚数をリフトする
- リフトをしやすくするために押しビベルは必須
- リフト後のターンオーバーの動きは通常のダブルリフトと同じ
- ナノダブルステップを使うことで、ターンオーバー後のリフトを簡単にできる
- 実際の使いどころ3つ
- 演技の流れを止めたくないとき
- 万が一ブレイクがつぶれてしまったとき
- 何をどうしても観客の凝視が外れないとき
以上がストライクダブルリフトの解説でしたがいかがだったでしょうか。
このダブルリフトを習得することで表現力も上がるし、万が一のときの対応力も格段に上がるので、ぜひ練習してみてください。
実際の現場では何が起こるかわかりません。不測の事態にも臨機応変に対応できるマジシャンになりたいものですね。
では、また。
sobogaの蛇足
実際の使いどころの紹介で、マジシャンの手元から凝視を外さない観客の話をしましたが、なかなかやっかいですよね。
ある程度、マジックのタネなんかをわかっている人ならまだいいんですが、そうではない一般の観客で、「何がなんでも見逃さない」「怪しい動き、おかしな動きはすべて捕捉する」という気概で臨まれることがごくごく稀にあります。
マジックを勝負事のように捉えていて、「騙すか、騙されるか」「見破れるか、見破れないか」みたいな感じになってしまっているんだと思いますが、きっと過去に何かあったんでしょうね。たぶん、しょうもないマジシャンにしょうもないマジックを見せられて、悔しい思いをさせられた、言わば被害者なんじゃないかなあと想像しています。
これがプライベートだったら「やらない・見せない」という選択肢が取れるので問題ないんですが、仕事となるとそうもいかないので困りますよね。お金払って見に来ているのにもったいないなあなんて思っちゃいますが。
で、実際にこのような観客がいた場合の対応ですが、この観客、「見破る!」と一点集中しちゃってるので、逆に、面白いほどミスディレクションに引っかかりやすい状態です。しかし!だからといって、テクニカルで強烈なミスディレクションネタで煙に巻くのは厳禁です。それをやっちゃうと症状を悪化させちゃいます。おそらく過去にそういうのをドヤ顔でやられてこうなっちゃったんだと思うのですよ。
最も効果的なのは、非テクニカルで強烈に不思議なセルフワーキングやメンタルマジックを見せることです。スタックやメモライズドを使う強烈なネタなんかも良さそうですね。「動きやスピードやテクニックで上手いことやられた」ではなくて、「何も怪しいことはやっていないはずなのに、ありえないことが起きた」と思ってもらえれば、少しはマジックの別の見方を伝えることができるかもしれません。
今回の技法とは関係ない話になってしまいましたが、sobogaの蛇足でした。
あらためて、では、また。
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