『オーバーハンドシャッフルコントロール』普通のシャッフルに見えるのにスタックコントロール可能なフォールスシャッフル♠【魔法のレシピ #26】

Text by magician soboga

目次

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はいどうもsobogaです。
今回は、フォールスシャッフルの一種で 「オーバーハンドシャッフルコントロール」 の解説です。 その名の通りオーバーハンドシャッフル型のカードコントロールですが、「オーバーハンドフォールスシャッフル」っていう呼び方もしたりするのかな。おそらく。

Trick Libraryでは、 「技法」 の 「コントロール」 と 「フォールスシャッフル」 のカテゴリに分類しています。難易度は [初級〜中級] です。

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今回解説するのは4種類のオーバーハンドシャッフル型カードコントロールです。1つは、トップ1枚またはボトム1枚の位置を変えないコントロール。2つ目が、トップ数枚〜10数枚、またはボトム数枚〜10数枚のスタックを元通りに戻すスタックコントロール。3つ目が、特定の1枚を任意の枚数目にコントロールするシャッフル。最後の4つ目が、デックの並びをすべて元通りに戻すフォールスシャッフルです。

トップ1枚だけでもめちゃくちゃ便利でカジュアルに使えるので、カードコントロールの初歩としてぜひ覚えてください。

では、解説を始めます。

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トップかボトム1枚のコントロール

初歩の初歩として、トップ1枚もしくはボトム1枚を、トップのまま、またはボトムのままにコントロールする方法です。

トップコントロール

1枚目のカードを1枚目のままにするには2回のオーバーハンドシャッフルが必要になります。

1. 1回目のシャッフルで1枚目をランして、残りを普通にシャッフルする。(トップカードがボトムに移動する)

2. 2回目のシャッフルは、最初は普通にシャッフルして、残り数枚になったら最後まで1枚ずつランする。(ボトムに移動していたカードがトップに戻る)

誰でも思いつきそうな方法ですが、1回目のシャッフルでトップカードをボトムにまわし、2回目のシャッフルでボトムカードをトップに戻すっていうことです。

難点としては、1枚目のランはまあいいとして、2回目の最後数枚のランが慎重になりがちなところでしょうか。マジシャン目線だからそう感じるだけのことなのかもしれませんが、最後のランはできるかぎり少ない枚数でやるのをおすすめします。ちゃんと練習すれば、ボトム1枚になるまでは普通のシャッフルをして、最後の1枚のみランをすることも不可能ではないですよ。

ボトムコントロール

ボトム1枚のみのコントロールは1回のオーバーハンドシャッフルで済みます。「ミルクビルドシャッフル」と呼ばれる手法ですね。

1. オーバーハンドシャッフルの最初の構えで、左手の中指・薬指・小指をボトムカードに当てる。

2. オーバーハンドシャッフルを始めると、ボトム1枚が左手に残され、最初にシャッフルされたパケットと合わさりデックの最後尾に位置する。

つまり、1回のシャッフルで、ボトムカードがボトムのまま残るっていうことですね。

ボトムカードの動きは、最初のパケットがスクリーンになっているので観客側から見えることはありません。普通のシャッフルと見た目がまったく同じなのでかなり優秀な技法です。

注意点は、最初のパケットとボトムカードが合わさるときに、左手の握りが強いと「シャコッ」という独特な音が発生してしまうことですかね。よほどの乾燥肌でない限り、ボトムに指3本が触れているだけで成立する技法なので、力んで握り込まないように気をつけましょう。

スタックコントロール

ここからは、スタックコントロールの解説です。ここで 「スタック」 と言っているのは複数枚のまとまりのことで、トップに特定のカードをセットしてある状態のことを指して「トップスタック」と呼んだりします。ボトムにあったら「ボトムスタック」ですね。これらのスタックを崩さないようにシャッフルするのがスタックコントロールです。

インジョグシャッフル

まずは、基本となるインジョグシャッフルを解説しましょう。

左手の小指の位置が重要です。左手の小指は、ボトムに添える形ではなく、手前エンド側に突き出た形でシャッフルを始めます。

1. 1回目のシャッフルアクションでは、普通のシャッフルのようにある程度の枚数のパケットを左手に取る。

2. 次のアクションでインジョグを作る。1枚のカードをランするが、手前に5㎜程ズラしてカードを置く。

3. 3回目のアクションからは普通のシャッフルを行う。

これらのアクションで、元々のトップカードの上にインジョグカードがある状態を作ることができます。これが、インジョグシャッフルです。

5㎜程度のインジョグでは心許ない気もするかもしれませんが、ここで役立つのが手前エンドに突き出させた小指です。この状態でインジョグを作ると、自然と小指の指先がインジョグカードに触れると思います。この、小指が触れた形でアクションをすれば小さなインジョグでも消失することなくシャッフルを続けることができるかと思います。

さらに続きます。

4. 小指をインジョグカードから離し、親指の第一関節の少し上、2〜3㎜くらい上の箇所をインジョグカードに当てる。

5. デック全体をボトム側に軽く傾けて、中指・薬指・小指を少し開くと、インジョグカードとボトム側のパケットの間に隙間ができる。

6. そのまま、右手で両エンドをつかむとインジョグカードとボトム側パケットの間でブレイクを取ることができる。

注意点が3つあります。

①インジョグは5㎜

バイシクルでいうと、カードの白枠プラス、赤とか青とか色の線がチラッと見えるくらいが5㎜なんですけど、これくらいのズレ幅にしましょう。

1㎝以上ある大きなインジョグなど論外です。とはいえ、最初から小さなインジョグを作れないのは仕方がないことですので、時間を掛けて徐々に小さくできるように頑張ってみてください。

②インジョグカードは別のカードでカモフラージュする

シャッフル終了後に、インジョグカードが独立して見えるのは良くないです。こういう状態のことですね。
きれい過ぎるんですよね。どっからどう見てもインジョグにしか見えません。

これを解決するには、インジョグの次からのアクションを雑めにシャッフルして、観客側から見たときにインジョグカードが目立たないようにしてください。

こんな状態です。正面から見るとただの不揃いな状態ですが、演者からはインジョグカードをしっかり認識できます。

③ブレイクを作るときにインジョグカードを押し込まない

ものの本によればここの場面、インジョグからブレイクを作るときは、親指でトップ方向に圧力を掛けながら、インジョグカードを押し込んでブレイクを作ることになっているし、自分もそのつもりでやっていましたが、実際に自分がリアルスピードでやっているのをよくよく観察してみるとぜんぜん違うことをやっているんですよね。

先に解説したとおり、親指はインジョグカードに当てているだけで、ブレイクそのものは重力を使って開いているのが本当のことなんです。

なんでかなーと思って考えてみたんですけど、それこそ最初は押し込む意識でやっていたんですよ。でもそれだと、小さなインジョグの場合、ミスすることが結構な頻度であったんですね。押し込んだだけでブレイクが作れないとか、ブレイクはできても小さすぎて使えないとか。成功したとしてもなんか慎重になっちゃっていたり。

それを改善するために自然と今の形になっていったっていうのが正直なところなんですが、あらためて自分のやり方を観察したらこういうことでした。ミスすることなく、極めて自然に、手元を一切見ずに技法を行えるのでおすすめです。

そして、これら3つのことを実践するのは正直に言って簡単ではないです。それなりの練習量が必要なことなので、まずは技法の理屈を覚えて、最初は無理のないところから始めて、少しずつ精度を上げていくようにしてみてください。

さて、次からはこのインジョグシャッフルを使ったトップとボトムのスタックコントロールの解説です。

トップスタックコントロール

トップに4枚のAをスタックした状況を想定して説明しましょう。この枚数については、実際には1枚〜10数枚、場合によっては20枚くらいでも対応可能です。今回は4枚でやりますね。

1. 最初のシャッフルアクションで、トップ4枚を含むそれ以上の枚数のパケットをシャッフルする。

2. 次のアクションでインジョグを作り、インジョグシャッフルを完了させて、元々のトップのパケットと残りのパケットの間にブレイクを取る。

3. 2回目のシャッフルを始める。

4. ブレイクより前を普通にシャッフルしていき、最後にブレイクよりあとのパケットを重ねてスタックコントロールを終える。

これがインジョグシャッフルを使ったトップスタックコントロールのひとつです。ブレイクより前のシャッフルは5回か6回くらいにするとちょうどいいかもしれませんね。

で、その5回目か6回目かわかりませんけど、ブレイク前パケットの最後のシャッフルアクションは、親指をパケットのサイドに引っかけて掻き出すように左手に引くと上手くいくでしょう。

インジョグのあとカットでコントロールする

また、インジョグシャッフルでブレイクを取るところまで(手順2まで)をやって2回目のシャッフルをしないというのもひとつの手だと思います。具体的にはカットでコントロールするんですが、ブレイクを取ったあとの手順から(手順3から)説明します。

3. デックをエンドグリップで持つために回転させるが、回転する中でブレイクをステップに変える。

4. デックをディーリングポジションに持ち直しながら、ステップからブレイクを取る。

5. ブレイクから上を数回に分けてカットしていき、最後にブレイクから下を重ねる。

これでもトップスタックは保たれますね。観客からの見え方は「シャッフルをしてカットしただけ」となるので非常にフェアに見えるでしょう。

こんな感じで、インジョグシャッフルでブレイクさえ取れてしまえば、その後のアクションはいろいろ考えられますよね。

ボトムスタックコントロール

続いて、ボトム側のスタックコントロールです。こちらも4枚にしましょうか。ボトムに4枚のスタックがある状況を想定したやり方です。

1. 残り10枚ほどになるまで普通のオーバーハンドシャッフルをする。

2. 1枚のカードでランをして、そのカードでインジョグを作る。
3. 残りのパケットをインジョグカードの上に重ねる。

4. 右手親指のちょうど第一関節をインジョグカードに引っ掛けて、デック全体をトップ側に傾け、左手親指をデックから離すとインジョグカードと元々のボトムにあったパケットとの間にブレイクができる。

5. ブレイクより上のパケットを左手に引き、2回目のシャッフルを始める。
6. 2回目のシャッフルが終わるとボトムスタックが元に戻る。

トップスタックの場合との違いは、インジョグカードを作るのが最後のパケットの直前であることと、ブレイクはインジョグカードの上に作るっていうことです。

また、トップスタックと同様に、2回目のシャッフルをカットに置き換えることもできます。ステップを経由してディーリングポジションでのブレイクまでいったら、ブレイクより上をまずカットして、残りを適当に何回かに分けてカットすればオーケーですね。

このボトムスタックコントロールには問題点がひとつあって、インジョグをトップ付近で作らなければならないということと、右手親指をトップ側からボトム側に向けて引っ掛けなければならないため、トップスタックのときのようにインジョグカードの上に雑にカードを被せてカモフラージュするのが難しいということです。普通にやるとインジョグカードがむき出しになってしまうということですね。

この問題を解決するには、シャッフルの初手から雑なアクションをして、シャッフル全体でカオスを演出するのが効果的です。

こんな様子です。内エンドのインジョグカードだけでなく、内エンドからも外エンドからも数枚のカードを飛び出させています。矢印のカードがインジョグカードですね。
でもこれ、程度問題もありますよね。やり過ぎてもわざとらしくなりそうなので、わざとらしくないちょうどいい具合を探ってみてください。

ターゲットカードを任意の枚数目にコントロールする

インジョグシャッフルでできることのひとつ、枚数目のコントロールです。ランニングシャッフル(ランのこと)とインジョグシャッフルを組み合わせて、特定のカードを任意の枚数目にコントロールします。狙った枚数分、連続したランをすることになるので2〜10枚目くらいが現実的ではないでしょうか。

ランをして観客にストップを掛けてもらい、そのカードをターゲットカードとして、ターゲットをトップから数えて5枚目にコントロールすることを想定した手順です。解説動画の冒頭のパフォーマンス映像で3つ目にやっているデモがそれです。

1. ランをして観客にストップを掛けてもらい、最後にランしたカードのインデックスを見せて覚えてもらう。左手のパケットはシャッフルアクションの位置に戻す。

2. さらにその上にランをしていくが、5枚目(コントロールしたい枚数目)でインジョグを作り、残りを適当にシャッフルする。

3. インジョグカードの下でブレイクを取り、トップスタックコントロールと同じ要領で2回目のシャッフルを行うと、トップから5枚目にターゲットカードをコントロールできる。

簡単にいえば、トップスタックコントロールの変形ですね。ターゲットカードの上に1枚ずつカードを乗せていって、狙った枚数目でインジョグを作れば上手くいきます。トップから5枚目にコントロールしたかったら5枚目でインジョグ、7枚目にコントロールしたければ7枚目でインジョグです。

デックの並びをすべて元通りに戻すフォールスシャッフル

最後は、シャッフル前のオーダー(カードの並び順)を崩さずに、シャッフルしたように見せる方法です。YouTube動画の、冒頭のパフォーマンス映像で最後にやっているやつですね。

これだけ聞くと、なんかすごい方法を使う難しいものに思えるかもしれませんが、やることはいたって単純で簡単な方法です。デックの並びをまったく変えないフォールスシャッフルの入門として覚えるのがいいかもしれません。

パフォーマンス映像と同じように、シャッフルアクションを9回行うオーバーハンドシャッフルに見えることを想定したやり方です。右手のパケットから左手親指で引き取る動作を1アクションとして数えています。リズム的には10になりますね。

1. 最初のシャッフルアクションでデックの半分弱の量のパケットを左手に取る

2. 続いて、8枚のカードを順に1枚ずつランを行う

3. 右手に残ったパケットを左手に落とすが、5㎜ほど手前に落として、8枚目にランをしたカードと最後のパケットで手前にステップを作る

4. インジョグからブレイクを作るのと同じ要領で、ステップから上のパケットと下のパケットの間に右手親指でブレイクを取る。ここまでが1回目のシャッフル

5. ここから2回めのシャッフル。まず、ブレイクから上のパケットを1回のシャッフルアクションで左手に取る

6. 続いて、8枚のカードを順に1枚ずつランを行う
7. 右手に残ったパケットを左手に落とす

細かく解説しましたがなんのことはなく、1回目のシャッフルでデックの真ん中あたりの8枚の順番を逆順にして、2回目のシャッフルでそれを元に戻しているだけですね。

ここでは8枚をランしていますが、それは9回のシャッフルアクションに見せたいからで、何回のシャッフルアクションに見せたいかによってランをする枚数は好きなように変えてください。シャッフルアクションの回数の数字からマイナス1した数字の枚数をランすればオーケーです。

また、ロベルト・ジョビーのカードカレッジ2巻なんかを見ると、ステップではなくインジョグを用いて行うように書かれていたりしますが、ステップでやったほうが簡単だし見た目の違和感もインジョグよりも少なくなります。もし、インジョグでやったとしても、インジョグカードが目立たないようにするには、最後のパケットをインジョグカードと同じ位置に落として隠蔽することになり、結局はステップを作るのと同じ結果になります。 であれば最初からステップで行うべきかなと思います。

オーバーハンドシャッフル型で、デックオーダーを元通りにするフォールスシャッフルをしようと思うとこんな形になります。ここまで読んでくれた方はお気づきでしょうが、技術的には簡単であることとは裏腹に、やや説得力に欠けるというのは否めないですね。1回目と最後のシャッフルアクションのパケット量が半分近くあることもそうだし、技法を通してほとんどがずっとランをしているっていうのも違和感を生む原因かと思います。

この技法で観客に違和感を抱かせない方法としては、次回解説するミスディレクション(Trick Library的には限定的に、ミスディレクションの中のひとつとして フレーム操作 という技法名で呼んでいます)を効果的にかけつつ、以前に解説した カウントレスカウント を使ってセリフを言いながら、しゃべりながらランをすることですね。

このように考えると途端に難しい技法になってしまいますね。まあ、ここまで考えなきゃならないのはプロマジシャンだけにしておいて、そうでない方にとっては、気軽にカジュアルに使えるフォールスシャッフルとして扱えばいいかと思います。とはいえ、次回解説するミスディレクションのひとつ「フレーム操作」に関しては、そこまで難しいものではないのでぜひチャレンジしてみてください。

まとめ

お疲れさまでした。ちょっとボリューミーでしたかね。一気見した人は訳わからなくなってるかもしれません。目次を頼りに、順を追って小分けに復習してみてください。

今回解説したのは、

  • トップ1枚またはボトム1枚のコントロール
  • インジョグシャッフルを使ったトップスタック、ボトムスタックのコントロール
  • トップスタックコントロールの派生である、特定の枚数目へのコントロール
  • デックの並びを元通りに戻すフォールスシャッフル

でした。

1枚のみのコントロールはいいとして、スタックコントロールの肝となるインジョグシャッフルは極めたら極めただけ技法全体のクオリティが爆上がりするものなので、ナメられがちな技法ではありますが、軽く見ずにしっかりと取り組んでみてください。

ではまた。

sobogaの蛇足

今回からデックの部位の呼び方を一部変えることにしました。各エンドの名前ですね。

これまでの解説では、演者側のエンドを「手前エンド」観客側のエンドを「観客側エンド」と呼んでいましたが、今回から、手前を「内エンド」観客側を「外エンド」と呼ぶようにしました。

「てまえ」は3音、「かんきゃくがわ」は5音と数えるか6音と数えるかわからないですが、どちらも2音に変えることでだいぶしゃべるのが楽になります。

ですので、12時の位置から時計回りに、「外エンド」「外右コーナー」「右サイド」「内右コーナー」「内エンド」「内左コーナー」「左サイド」「外左コーナー」ですね。

ちなみに、「トップ」「ボトム」

そしてこの際(キワ)の部分は「エッジ」です。

ということで、今後はこの呼び方で統一していきますというお知らせでした。

あらためて、ではまた。

参考文献

おすすめカード

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