Advertisement
はいどうもsobogaです。
マジックをかじったことがある人なら、誰しもが一度は聞いたことがある名前が「ダイ・バーノン」じゃないでしょうか。今回は、その「バーノン」の名を冠したシークレットアディションのひとつ「バーノンストリップアウトアディション」の解説です。
「バーノンストリップアウトアディション」、「ヴァーノンストリップアウトアディション」や「バーノンズストリップアウトアディション」とか、単に「バーノンアディション」とか「ストリップアウトアディション」だったりで、日本語圏でも英語圏でも若干、技法名の表記ゆれが見られますが、まあどれでも構いません。
ただ、一度見かけたことがあるのが「バーノンストリップアディション」で、これだけはちょっとダメかなと思います。「ストリップアウト」の意味は「取り除く」なので、「ストリップ」では意味が変わってきちゃうため「アウト」を付けるのを忘れないようにしましょう。英語表記だと「Vernon strip-out addition」ですね。
さて、どんな技法かというと、技法の種類的には「シークレットアディション」の一種になりますが、YouTubeの冒頭のパフォーマンス映像の用い方をすると本質はスイッチです。ようは密かなパケットの入れ替えですね。「ダミーパケット」に密かに「本命パケット」を追加して、そのあと密かに「ダミーパケット」を取り除くという方法を取っています。
ダミーと本命をすり替えた結果、演者に都合の良いカードを観客の選択カードとする場面を想定すると「フォース」であるとも言えますね。
このように、フォースとしても使えるし変化現象にも使える汎用性の高さもあり、そして、技術的な難易度はそこまで高くないので覚えておいて損はないかと思います。
Trick Libraryでは、「技法」の「アディション」「スイッチ」「フォース」のカテゴリに分類しています。難易度は[中級]です。
バーノンストリップアウトアディション必須の基礎技法
用語的なものも含まれていますが、これらはすべてWeb上のトリック書庫「Trick Library」にまとめてあります。基本的には、この記事の中ではこれらの詳細解説はしていません。もし必要な場合は、上のリストにはすべてリンクを貼ってあるのでそこから飛ぶか、本文中のリンクから飛んで確認してください。
それでは解説です。
Advertisement
表向きバージョンの解説
ここから解説に入っていきますが、非常に単純明快な方法論ですのでざっと流れで説明してしまいます。冒頭のパフォーマンス映像の表向きでやっているものをベースに解説します。現象的には「変化現象」ですね。
セットアップ
デックのトップに変化後のパケットをセットしておきます。ここではA4枚です。
変化前のカードをアウトジョグ
変化後のカードでブレイク
そして、最後のA4枚が観客の目に入る直前に、両手を演者側に傾けながらスプレッドして、ボトムから4枚目の、最初のAを、左手親指を使ってわずかに手前に傾けてからスプレッドを閉じれば、ブレイクを作るのにちょうどいいインジョグを作れます。
決してアウトジョグと同じような動きをしてはいけないし、スプレッドを閉じる前に大きなインジョグができあがっているのもNGです。インジョグの詳細や、アウトジョグとインジョグの違いなどについては、「ジョグ」の解説記事をご覧になってください。
また、インジョグを作る動きは観客から注目されたくない動きです。4枚のAを確認した直後あたりから、スプレッドを閉じる直前まで、しっかり「フレーム操作」を行って観客の視線と意識を分散させてください。フレーム操作とは魔法のレシピ独自の呼び方ですが、ミスディレクションの一種のことです。詳細についてはフレーム操作の解説記事を参照してください。
スプレッドを閉じたらインジョグを使ってA4枚の上に小指でブレイクを取ります。
ここでは、この次の動きをしやすいように、通常のピンキーブレイクではなく、ティルトのような、内エンドが均等に浮き上がっているブレイクを作ります。
変化後のパケットをアディション
ここからの動きがこの技法のキモの部分です。
スプレッドを閉じると、アウトジョグしておいたQ4枚が外側に突き出たままの状態になっていますが、これをスクリーンにして、ブレイクしておいたボトムのA4枚をフラッシュしないように重ねて、8枚を一緒にデックから抜き出します。ここは、ポイントがいくつかあるので細かく見ていきますね。
① 突き出た4枚がすべてQであることがはっきり見えるように軽く広げる
② 右手でデックのブレイクより上を、ヒンズーシャッフルをするときのように持つ。このときの状態を細かく見ると、右手でA4枚以外のデック全体をヒンズーシャッフルのときのように保持していて、A4枚を左手でディーリングポジションに保持している
③ A4枚を保持したまま左手を前方に移動させ、Q4枚とA4枚がちょうど重なるところで、人差し指を使って8枚の外エンド揃える
④ 8枚のカードがズレないようにしっかり揃えたまま、アウトジョグしたカードをデックから引き抜く
これで、Q4枚の下にA4枚を密かに追加しつつ、デックから取り出すことができます。
この表向きのパターンでは、Q4枚のパケットとA4枚のパケットの間にブレイクを取る必要はありません。
また、最初にQ4枚を軽く広げることで、スクリーンを広げて確実にフラッシュしないようにしています。この動画のように、一方向からの視線だったら必要ありませんが、観客が3人とか4人とか居て、いろんな角度から観られているような環境では必須になります。観客側からは、引き抜く4枚の改めに見えるように、何らかのセリフやジェスチャーが必要です。
変化後のパケットを示す
表向きバージョンの残りのハンドリングは簡単です。
左手のパケットの上に右手のデックを重ねて、デック全体を裏に返したら、トップ4枚を右手に数え取ればスイッチ完了です。あとは好きなようにA4枚を観客に示してください。
ここで、以前解説した「デックフリップ」をおまじない的に使ってみてもいいかもしれませんね。
裏向きバージョンの解説
続いて、冒頭パフォーマンスのふたつめでやっている裏向きバージョンも解説しましょう。こちらは主に「フォース」に使えますね。
先に表向きバージョンとの違いをお伝えしておくと、スイッチの仕方が違います。スイッチは表のときと同じように「デックを重ねて全体をひっくり返す」では説得力が出ませんので、別の方法を取ります。(説得力がないというより、その方法だと何の脈略もなく唐突にA4枚が現れるため、観客の理解が追いつかない可能性が高いです)
セットアップ
裏向きバージョンでは、最初にシャッフルを観客に見せたいので、結果、セットアップは表バージョンと同じになります。フォースするパケットとしてトップにA4枚をセットしておきます。
フォースカードをボトムに回してブレイク
はじめに、オーバーハンドシャッフルの形で4枚ランをします。そして、残りを適当にシャッフルします。
選択カードをアウトジョグ
ここは表バージョンと特に違いはありません。例えば、4人の観客に1枚ずつタッチしてもらって、それらのカードをアウトジョグしていきます。これらの4枚は、最終的にはフォースする4枚とスイッチするダミーの4枚なので何が選択されても構いません。
ただし、気を付けるポイントを強いて挙げるならば、ボトム4枚の中から選択されるのは都合が悪いので、一度に広げるスプレッドの枚数を10枚程度に調整して、トップから40枚くらいまでの間で選択させるような工夫が必要になります。
ボトムから4枚目でブレイク
表バージョンと基本的な動きは同じなので解説は割愛しますが、ボトムから4枚目でインジョグを作り、スプレッドを閉じたらインジョグを使ってブレイクを取ります。
フォースパケットをアディション
ここから表バージョンとの違いが大きくなります。
アウトジョグをスクリーンにして密かにアディションするのは同じですが、ダミーパケットとフォースパケットの間に小指でブレイクを取ります。
この写真のように、引き抜く前に両パケットの間に小指を当てておけば、引き抜いた後に自然とブレイクが形成されます。
ダミーパケットを取り除く
最後にダミーパケットを左手から取り除きますが、次のようにハンドリングします。
① 左手パケットの内エンドと右手パケットの外エンドを当ててデックを揃える
② 左手パケットのトップカードと右手パケットの外エンドを当ててデックを揃える
③ 左手の親指・人差し指・中指を立てて、右手デックの外エンド付近を掴み、一旦右手をデックから離す。このとき、デックのボトムは薬指の先端に乗せて安定させる
④ 再び右手でデックを持つが、左手人差し指をどけ、右手の向きを変えてエンドグリップで掴む
⑤ エンドグリップで掴んだ一瞬後、右手のデックと左手のパケットの角度を揃えつつ、それぞれの外エンドを密着させる
⑥ それぞれの外エンドを密着させると同時に、右手親指で左手のパケットのブレイクから上の4枚を、右手デックのボトムに重ねる
⑦ すぐに両手を離して、左手のパケットのトップカードと右手パケットの左サイドを当ててデックを揃える
こんな感じですが、観客からどう見えて欲しいかというと、カードをデックから抜き出した後「崩れたパケットとデックを揃えつつ右手を持ち替えた」と見えて欲しいわけです。
大事なポイントは、ハンドリングの意味を取り違えないということです。ここの動きは、右手の持ち方をヒンズーシャッフルのグリップからエンドグリップに持ち替えるために一旦左手に渡した、という動きなわけで、決して左手のパケットの上に重ねた後に右手で取り直したわけではないということです。
はい、ここまでが裏向きバージョンのスイッチのやり方でした。表向きバージョンと比べると、ダミーパケットを取り除くのにひと手間かかりますが、裏向きで観客に選択してもらってスイッチをしようと思うと、こういったハンドリングが必要になりますね。
まとめ
以上がバーノンストリップアウトアディションの解説でした。
ダミーをアウトジョグする。そのアウトジョグをスクリーンにして、その裏で本命をアディションするという、ダイ・バーノンらしい極めて合理的で自然な手法ですよね。さらにいえば、技術的にも簡単でハンドリングに無理がなく、角度に弱いということもない、非常に優秀な技法のひとつです。
今回は、スイッチをメインに解説しましたが、もちろんアディション目的にも大いに使えますのでぜひ練習してみてください。
また、技法単体で説得力を持ち合わせているので、少しの演出を加えるだけで1つのマジックに成り得ますよね。次回は、バーノンストリップアウトアディションに演出を加えてマジック化をする実践を通して、マジックにストーリーを付けるとはどういうことか、ということの解説をします。
ではまた。
参考文献
おすすめカード
関連記事
Advertisement